フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエと並んで20世紀を代表する建築家、ル・コルビュジエ(本名:シャルル・エドゥアール・ジャンヌレ)が、設計したブエノスアイレス州ラプラタにあるクルチェット邸。
普段は資料館として公開されているこの邸宅に、アルゼンチンの現代アートを配置して、椅子で成功したデザイナー、レオナルド一家の自宅にした。建築を見るのではなく、住む体験ができることで、もの言わぬ邸宅が、実は最も饒舌な主役になっている。
レオナルドの成功のきっかけとなった椅子は、実在するアルゼンチン新進デザイナー、バッティこと、ディエゴ・バティスタの作品で、日本でも販売されていたプラセンテーロ・チェア。
身体を優しく包み込んでくれる椅子の名称「プラセンテーロ」はスペイン語で 「心地よい」という意味だが、これは「プラセンタ」(胎座)が語源。
由緒正しき家に向かって、窓を開けようとする隣人ビクトルの出現で、見て見ぬ振りをしていた家族のほころびが、一気に明らかになる。自分のことしか考えない妻、親とはひと言も話さない娘、「僕は構わないけど、妻が許さない」といって隣人を説得しようとする夫。
見たことあるような光景が散りばめられる一方、怖いもの無しのビクトルは着々と窓を作って行く。レオナルドとビクトルのかけひきと、家族に起こる変化、思わぬ展開から目が離せない。