INTRODUCTION
独裁政権下の知られざる真実
1936年から3年間に渡って、国を二分した内戦は、フランシスコ・フランコ率いる反乱軍の勝利に終わり、その直後から敗者である共和国派の生き残りを一掃するために、その肉親や恋人である女性たちが、マドリードの刑務所に次々と収監された。独裁政権後も家族のために沈黙を守り続けた女性たち。全国をまわって生き残った女性たちにインタビューし、その証言を元に書かれた故ドゥルセ・チャコンの同名小説(「La Voz Dormida」2002年ブック・オブ・ザ・イヤー)が、初めて女性刑務所内の実態を明らかにした。
映画化に至った経緯
本作のベニト・サンブラノ監督(「ローサのぬくもり」1999年)は、2003年に偶然、この小説を読んで、すぐさまチャコン氏に連絡をとった。チャコン氏は「ローサのぬくもり」の大ファンで、すぐに共同脚本を書こうということになった。だが、アンダルシアにいた監督が、マドリードまで会いに行ったとき、すでにチャコン氏は入院していた。末期の膵臓がんだと診断を受けながら、笑顔で監督を迎え、映画化について話し合った。1ヶ月後、監督がキューバで2作目の「ハバナ・ブルース」(2005)を撮影中に、チャコン氏は亡くなった。チャコン氏との約束を果たすため、そして自分のために、それから6年かけて、本作を完成した。
スペイン内戦とは?
国王が国外に亡命した第二共和制下、1936年2月に行われた総選挙で、反右翼で団結した左派(共産党、左翼共和党、アナキスト、労組など)による人民戦線内閣が生まれた。同年7月に、フランコ将軍率いるモロッコ駐留軍が蜂起して本土に進軍。地域によっては共和国派を支持した軍もいたが、主に労働者や農民、知識人、民間人が武器をとって叛乱軍に抵抗、保守派やカトリック教会は叛乱軍を支持した。イタリア、ドイツ、ポルトガルが叛乱軍に武器や兵士を提供。内部分裂を起こした共和国派が弱体化するなか、1939年4月、全土を掌握したフランシスコ・フランコが内戦終結を宣言。国家元首となり1975年に亡くなるまで軍事独裁体制をしいた。