default img

NHKスペシャル「ランドラッシュ」

放送翌日から書き始めたのに、途中でコンピュータと持ち主が
冬眠してしまい、今になっちまいました。
2月11日に放送されたNHKスペシャル「ランド・ラッシュ」
自国の食糧危機に備えようとする国々の
農地争奪戦を取材したもの。
おお、やっと話題に上ったのか、と興味深く観た。
というのも、経済破綻した後のアルゼンチンで、
中国企業が、パンパ(草原地帯)を買い叩こうとしている、
という話をアルゼンチンの友人から聞いていたから。
中国は、ペルーの鉱山の採掘権やキューバの石油の採掘権も
手中に収めているので、これは、今後の食糧と水、
そして、エネルギー危機に備えて、相当な準備をしているな、
と思った。米国の国債を大量に買っていることからも、
中国が世界の覇権を狙っていることは、明らか。
Nスペは、ラテンアメリカには言及していなかったが、
ウクライナやロシア沿海地方の
肥沃な土地を買い求める欧州、東欧、中東諸国、
中国、韓国、インドの企業の争奪戦をクローズアップ
していた。イギリスなどは東京23区に匹敵する土地を
ウクライナで買っている。
そんなに使われていない広大で肥沃な土地が、ウクライナや
ロシア沿海地方にあるのだ、ということを初めて知った。
ロシア沿海地方では、地理的なメリットもあって、
中国と韓国がしのぎを削っている。
韓国は、海外で自国内と同じだけの広さの農地を
獲得することを目標に、イ・ミョンバク大統領が
政府の全面的なバックアップ(低金利の融資や
現地の情報提供)を約束したため、
今や農業、食糧関連企業だけではなく、
携帯電話会社まで農地獲得のために進出し
強硬手段をとる企業もでてきている。
マダガスカルでは、国土の半分の買い占めようとして
国民の抗議行動が激化し、大統領が失脚した。
東アフリカのタンザニアでは、1万ヘクタールに及ぶ、
肥沃な土地を買い上げ、そこに住む1万人が
強制退去させられようとしている。
住んでいる人を強制退去させたり、
飢餓に苦しむ人々がいる国の肥沃な土地で
裕福な自国の食糧を確保する。
何か思い出しませんか?似ていませんか?
ラカンドンのジャングルの中に天然資源が
あるから、と先住民を強制退去させようとした
メキシコのことを。
つまり、天然資源もそうですが、
これは明らかに「農業植民地主義」
(agro-colonialism)です。
そして、いつも多国籍企業や外国企業に
懐柔された国の代表たちが許可を出す。
タンザニアだって、80年代は独自の
「家族的社会主義」を打ち立てていたのです。
でも、だから、土地はすべて国有。
そして、今の大統領は、住民の行き先さえ
確保せずに、韓国企業に土地を売り渡す。
住民たちは、寝耳に水で、地元の裁判所に
押し掛けていたが、たとえ正義感の強い判事がいたとしても、
これを覆すことは、困難なのは明らか。
金にモノを言わせる外国企業、腐敗する政府。
この2つのコンビには、一般の住民たちのことなんて
見えていないから。
番組では、日本に具体的な食糧戦略がないことや
「ランド・ラッシュ」に乗り遅れていることを
示唆していたけれど、日本の農業団体は、
「海外で農地を獲得するより、
まずは、日本の農業の再生を!」という声をあげている。
下記の映像は、アルゼンチンの公共テレビ番組。
韓国がマダガスカルの農地130万ヘクタール
を99年間借り上げる計画を承認しようとしている、と
国民が抗議行動を起こし、135人が死亡、
大統領が辞任した事件から、各国の動きを短く
まとめている。

© Noticiero Visión Siete/ TV Pública/ Argentina
買付け企業は多国籍企業や投資銀行で、
これが進めば、農地を売った国の国民たちが
飢えていても、土地や食糧価格が高騰するという
事態が起こる、と。
NHKでは紹介されていなかったが、
日本の三井グループも2007年11月にブラジルで、
大豆栽培のために10万ヘクタールの農地を購入。
中国企業は、すでに転売を考えた土地購入をしている。
デリバティブで崩壊した金融バブルが、今度は
世界の貧しい国の土地に流れ込みそうな気がしておそろしい。