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「ストーリーズ」

「ストーリーズ」TIFFコンペ出品作
スペインのガリシア州ポンテベドゥラ県出身のマリオ・
イグレシアス監督が同郷人でアマチュア劇団の仲間でもある
コンセプシオン・ゴンサレス(本業は心理療法士)を主役に
起用、作家志望の中年主婦が小説の執筆を通じて、心の闇に
立ち向かっていく姿を描いたスペイン映画。
(インターナショナル・プレミア)
夜になるとパニック障害に襲われ、セラピストのもとに
通っている専業主婦ロサリオは、小説を書きためている。
その彼女を主人公にした物語がカラー映像で描かれる中、
彼女が創作した(という設定の)5つの物語がモノクロ
映像で挿入されていくという凝った構成の作品だ。
その短編が実に面白い。
5編とも女性を主人公に据えたドラマティックな話で、
監督が短編映画での受賞歴が豊富だということも頷ける。
だが、それに比べると、本スジの物語の方は、全くこなれて
おらず、無理矢理感がある。
例えば、人形を使って主人公の状況(死産だった子供と
亡くなった母親に囲まれて身動きが取れない。頼みの夫は
遠い存在)が、つまびらかにされていく冒頭のセラピーの
シークエンス。導入の形としては上手いが、少々長過ぎる。
一方、夫との関係が変化する過程の描写は、舌足らずだ。
妻が書いた小説を読もうともせず、彼女が抱える不安感に
対しても無関心に見える(ような描写の)夫の態度が、
妻と待ち合わせしてカーディーラーを訪れるや、急変。
妻に対して気配りし、優しく接するようになる。
そのあまりの唐突さに、見ている方は面食らってしまう。
短編の出来がよいだけに、とても惜しい。
それとカメラワークの稚拙さも目立つ。監督自身が撮影も
担当したらしいが、カメラの“ブレ”ぶりは許容範囲を大きく
外れているし、カット割と編集にも工夫がない。
手持ちカメラを使うことで、ドキュメンタリー・タッチを
狙ったのだろうが、意図した効果は得られていないと思う。