日本の政治家が余りにつまらないので、
スペインのニュースで連日報道される
ギリシャのバルファキス財務相が気になって仕方ない。
四面楚歌の状況で交渉を続ける
ギリシャの代表として、いま債権団(IMF, 欧州中銀、EU)
の矢面に立っている。
6月30日に国際通貨基金(IMF)への
約15億4,000万ユーロの返済ができなければ、
債務不履行(デフォルト)となるのだが、
ギリシャの最大の債権者はユーロ圏(60%)なので、
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の
デイセルブルム議長もデフォルトを避けるために
奮闘している。
債権団の提案は「屈辱的な緊縮財政」だと
年金削減を拒否。18日の会合で合意に至らず、
今後はEU首脳会議での話し合いが続く。
ギリギリまで交渉を続けようとする
ギリシャのバルファキス財務相は、
今年の2月に就任。英国を初めとした各国の
財務相との話し合いで欧州を回った時に
ノーネクタイで通し、「私が破産した国の財務相です」と
いう挨拶で始めたことから、欧州のメディアが
一斉に注目した。
彫りの深い顔と自分流のスタイルを貫く姿に、
他の政治家が皆、退屈に見えると言われるほど。
「ヨーロッパの北が働き者で南が怠け者という言説は
間違っている」と堂々と言ったことで、スペイン、
イタリアでは人気急上昇。
周りはみな敵、みたいな状況でポーカーフェイスを
保ち、粘り続ける財務相がどんな人なのか?
と思ったら、「ポスト2008年世界のための思考」
という英語ブログがあり、自らのことも語っている。
thoughts for the post 2008 world
1961年アテネ生まれ。1978年に英国のエセックス大学で
統計学と数学を学び、バーミンガム大学で修士、博士号は
経済学。82-88年までエセックス大学やケンブリッジ大学で
教鞭をとり、1987年、サッチャーが首相になったことで、
耐えられず、1988年から2000年までシドニー、2000年に
ギリシャに戻り、アテネ大学で経済政策を教えながら
アテネ大学に経済の博士課程を創設する(2010年の危機で崩壊)
2000年代の前半から、友人のジョセフ・ハレヴィ教授と
共同でグローバル経済とユーロ圏の持続性の危機に関する
記事を書いたり、このままだとギリシャはボロボロになる、
という警告を発したりしたが、誰も聞く耳を持たなかったらしい。
ジョセフと共に、戦後資本主義の第二段階が終わり、
これまでの経済理論が行き詰まる、という内容の本を執筆
していた時に、2008年の危機が起こる。
傷が浅いうちにデフォルトするか、債務元本の減免を
行いつつ、ゆるやかなインフレにもっていって、債務の山を
減らすべきだ、とギリシャ国内だけではなく、EUにも「謙虚な提案」
をして呼びかけたが、本当のことを言い続けたことで、
身の危険を感じるまでになり、ついに2012年に米国へ出国。
テキサス大学で教鞭をとり、オンラインゲーム会社ヴァルヴの
チーフエコノミストとなった。
Valve Software Appoints In-House Economist
「反緊縮政策」の急進左派連合を支持して2015年の総選挙で当選。
これまでの緊縮政策で、すでに疲弊している年金生活者や栄養失調で
倒れる子供がいる時に更なる緊縮は無理だと、債権団からの「年金削減」に
関しては、「越えてはならない一線」だと譲らない。
18日に提案した内容も自らブログに上げて、読者に判断してほしいと
している。(コメントの賛否両論がすごい)
Greece’s Proposals to End the Crisis: My intervention at today’s Eurogroup
米国が最大の出資者であるIMF〔日本は2番目)は、
ラテンアメリカ諸国にとっては、お金を借りたくない相手。
借りる代わりに規制緩和や外資導入を要求され、自由主義経済の
優等生!と、もてはやされたアルゼンチンが財政破綻したことは記憶に新しい。
もともと、ギリシャは、2001年にユーロに加盟する時ギリギリまで、
債務残高と財政赤字のGDP比が、それぞれ、60%未満と3% という
加盟条件をクリアしていないのではないか、と
疑われていて、当時は連日、ニュースで取り上げられていた。
それが、明確に分かったのは、2009年のギリシャの政権交替時。
ゴールドマン・サックスが通貨・金利スワップ取引という
デリバティブを使ってギリシャの粉飾に協力した、と新政権が
暴露した。
ブルームバーグ記事
日本はIMF側の視点で報道するので、
ギリシャの破綻は「自業自得」だと思われるかもしれないが、
イタリアもスペインも翻弄されている国債バブルの
根底には、通貨だけ統一してしまったユーロ圏の
格差に乗じて国債やCDSで儲けている&儲けようとしている
投資銀行や投資家らがいることは否めない。
どちらにせよ、これまでの失敗を一手に背負って
「反緊縮財政」で始まったのが、チプラス政権であり、
EU、IMFと欧州中銀を相手に、「尊厳ある合意」を求めて
粘っている姿から目が離せない。
追記:18日の交渉決裂でユーロ圏首脳会議との協議に
入ることになったが、22日、ユーログループとの
緊急会議でギリシャは新たな提案を提出した。
2012年、自らリポートするギリシャ
の実情。Welcome to the eye of the storm (英語)
投資銀行がどう変わって来たのか。
先日、過労死疑惑も起こった
ゴールドマン・サックスの変遷。
(2012年刊)