すでに読んでらっしゃる方、多いとは思いますが、
でも、書かずにはいられないほど驚いた第二弾。
同じ著者の「ルポ 貧困大国アメリカ」は、すてに読んでいた。
サブプライムローンや医療費で中流層が一気に貧困層に
陥る現実、はたまた民営化される戦争。
著者の冷静な語り口の中に熱い炎が燃えている。
とても好感を持った。
でも、「ルポ 貧困大国アメリカ」は、すでに
スペイン語系のニュースやサイトで読んでいたことが
多かったのと、現在、米国在住のメキシコ人の
友人たちからもろもろ聞いていたので、
「やっぱりひどい!」と思ったが、驚きはしなかった。
それが、この「ルポ 貧困大国アメリカII」には驚愕!!した。
最も驚いたのは第一章「公教育が借金地獄に変わる」と
第四章「刑務所という名の巨大労働市場」だ。
これは、気をつけなければ現在の日本にも簡単に
当てはまるようなことだったから。
まず、公教育について。
昨年のカリフォルニア州立大学での「値上げ反対」
抗議行動は記憶に新しいが、なぜ、32%もの
値上げをしなければならなかったのか、そして、
なぜ、借金地獄に変わるのか、ということを
丁寧に書いている。
中でも驚くのは学資ローンだ。
公的学資ローンでは足りずに借りる
民間の学資ローンの実態。
年3.4%の固定金利で借りたものが
2年たったときに手紙1本で8.5%になる。
抗議しようと電話してもたらい回し。
延滞がきかず、利子が膨れ上がる。
9ヶ月支払えないと自動的に債務不履行となり
回収機構はどこまでも学生を
追い続ける。その回収機構とは、実は、
学資ローン会社の子会社だったりする。
住宅ローンよりも学資ローンがひどいのは、
消費者保護法が適用されないため、
借り換えができず、破産してもチャラにならないことだ。
本書に出て来た学生たちが、その後
どうなったのか、とても気になる。
詳しくは本書を読んでいただきたいが、
この章を読んで思い出したのが、
ひとりで娘を育てた友人の話。
彼女は生活も苦しいし、高校卒業したら
娘には働いてほしいなあ、と
思ったらしいが、娘は大学に行きたいと言う。
そんな余裕はない、と言ったら、
奨学金をもらうからいい、と。
「恐ろしくて額を聞けないから、
自分で返せると思うなら、借りればって言ったのよ」
と友人。
4年制大学なので、無利子の育英会だけでは足りず、
利子付きも借りているのだろう。
国公立でも年間50万以上かかる。初年度は
入学金も必要だから、相当な金額になる。
22歳で借金を背負っての出発。
それが20年間続くのだ。
もし、米国のように容赦ないシステムだったら、
と思うと、恐ろしい。
貧困に陥らないために、頑張って大学を出ても
就職がない、という状況は、日本も同じではないか。
そして第四章「刑務所という名の巨大労働市場」は
もっと恐ろしい。
日本でも始まっている民間刑務所。
財政難を打破するために民間に任せる。
米国では、民間刑務所経営のために、
受刑囚たちが「第三世界よりも安い労働力」に
なっている。
その上、米国では刑期中に部屋代や医療費を
徴収される。貧しくて窃盗などの罪で捕まったら、
出る時には借金づくめ。
これには本当に驚愕した。
軽い罪でも3度有罪になったら終身刑という
「三振法」は、これらの労働者を増やすためか、
と思えて来る。
はたまた、刑務所を不動産投資(REIT)の対象にも
している。
「順調に増加する有罪判決と逮捕率が」確実に
利益をもたらしてくれるそうである。
米国は、ここまで病んでいる。
サブプライムローンの破綻もリーマンショックも
教訓にはなっていない。
これからホームレスを犯罪者として取り締まる自治体や
アリゾナのように、外国人登録証の常時携帯、
不法移民か否かの判断を警官に任せることを
うたった新法を通してしまう州もある。
(これについては、次回に)
日本にだって人ごとではない。
現在は、国との契約で民間がつくった刑務所が
豪華すぎて(個室にテレビ付きとか)批難をあびているが、
これから国の財政が逼迫してくると、どうなるか
分かったもんじゃない。
米国並みにやり直しがきかないような社会に
なっている日本。自らの問題として、考えるためにも、
本書は、おすすめです。
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